ネット裏から

2002年11月19日
 いよいよ明日、20日はプロ野球新人選手選択会議。ドラフト会議が行なわれる。
 昨年から施行されている自由獲得枠で入団の決まっているのは12選手。自由獲得枠は高校生以外の選手を自由競争で獲得出来るものだが、不思議なことに12選手は全て“大学生”である。これも“松坂世代”と呼ばれる余波なのだろうか? (個人的には“松坂世代”という呼称は好きではないのだが…)また、12選手中、10選手が投手というのも面白い。
 自由獲得枠の上限2枠を使ったのは、ジャイアンツ、タイガース、ベイスターズ、ライオンズ、ホークスの5球団。逆に自由獲得枠を一切使わずに一巡目から選手を指名するのはスワローズ、ドラゴンズ、バファローズ、マリーンズ、ファイターズと、同じく5球団だ。現実的な問題である資金力の有無は抜きにして、各球団の戦力構成や将来的なビジョン。あるいは伝統みたいなものが、このことからも何となく浮かび上がって来るように感じるのは僕だけかな?

 当たり前のことであるが、ドラフト会議の主役は指名される選手である。即戦力として評価されている選手、将来性を見込まれた選手などなど。立場は様々だけれども、みんな大きな夢を抱いて、未知の世界に一歩を踏み出す。(注:サンワード貿易からファイターズに入団が内定している渡辺孝男捕手は91〜00年までライオンズでプレーしたプロ経験者だが)その未来のキラ星を発掘して来るのはスカウトと呼ばれる男達だ。
 スカウトはプロ野球経験者がほとんどであるが、必ずしもそうとは限らない。例えば、バファローズの柳川浩二は近畿大を卒業後、スカウトとして入社。タイガースのチーフスカウト補佐・嶌村聡は阪神電鉄からの出向で球団本部へ。広報などを経て、現在に至る。また、竹内孝行も嶌村と同様で、そもそもは阪神電鉄の社員である。

 僕は仕事柄、スカウトの方々と接する機会が多い。僕の素性を知らないスカウトの方は
「あのゴッツイ奴、どこにでもおるな。何者やねん?」
 なんて思っているのかも知れないが、馴染みになったスカウトの方々はみんな親切だ。バファローズの吹石徳一はいつもにこやかに挨拶をして下さる。マリーンズの永野吉成、松本尚樹は
「どうかマリーンズを御贔屓に」
 と、丁重なこと、このうえない。
 また、ベイスターズの宮本好宣からは阪急電車(京都線)で一緒になった際に
「ここの席空いているから、座んなよ」
 優しく声を掛けて貰ったのは、とても嬉しかった。
 ブルーウェーブもチーフスカウト・谷村智啓が大学の大先輩ということもあり、話し易い雰囲気。ちなみに福良淳一はまだ東京で仕事をしていた時に、“居酒屋あぶさん”の店長である石井和夫に、山口高志は前述のタイガース・竹内(山口、竹内は関西大の先輩後輩の関係)の紹介だ。
 山口は日本球史に名を刻む“速球王”と呼ばれた元投手。僕は一度、とあるサイトで『ネット裏の速球王』というショートストーリーを書いた縁もあり、山口には色々と選手の見方や試合の流れたるものを教わった。言葉を慎重に選んだ分かり易い説明は、僕の仕事にも多いに役立っている。
 最近、その山口がユニフォームを着るのではないか? という噂が流れている。しかも、現在、所属しているブルーウェーブではなくタイガースの二軍投手コーチとして。実際、スポーツ新聞にも推測と思われる記事が載っていたこともあった。また、僕の情報網でも、全く根拠がない話しではない。要するに山口が来シーズンからタテジマのユニフォームに袖を通す確率は極めて高いのである。
 この1年間、僕はネット裏で山口に会うのを楽しみにしていたこともあったので、少しばかり寂しい気分になっている。でも、山口は能力を買われて、スカウトからコーチに転身するのだ。肩書きが変わっても、職場がネット裏からグラウンドに移っても“野球人”の山口は健在である。その手腕を楽しみに見守りたいものだ。ネット裏から―。

 明日、山口はどのような想いで最後!?のドラフト会議を迎えるのだろう? そんなことも思いつつ、僕はドラフト会議の幕が開くのを待っている。

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