僕にしては異例中の異例。2日連続の早起き。まだ完全に目覚めていない脳ミソと肉体に、必死でムチを打ち、身支度を整えた。
 阪急神戸線→京都線→地下鉄烏丸線と、経由して、北大路駅にて下車。エスカレーターで地上に出ると、雪が積もっているではないかっ!もう、雪は降っていなかったが、底冷えが非常に厳しい。でも、京都の寒さは、何と言って良いのか、品が良い。山々を背景にした街並みと雪景色がマッチしている。厳かな雰囲気(僕の先入観かな!?)に包まれているので、自然と背筋もピンと、伸びてしまうものだ。

 タクシーを捕まえて、柊野の立命館大のグラウンドへ向かう。積雪で真っ白な絨毯が敷かれているような鴨川の川辺を、散歩中であろう犬が嬉々としながら駆け回っている。綱を持っている飼い主は足元を必要以上に気にしているせいか、犬に引きずられているようであった。
「スカウトの方ですか?あっ、違う。どこから来はったんですか?はぁ、西宮ですかぁ。この辺は朝7時くらいにブワーッと、雪が降って来ましてなぁ。かないませんわ。ほらっ、こんな緩やかな坂道でも滑ってまうんですわ」
 タクシーの運転手はよく喋る人だったので、アッという間に立命館大グラウンドに到着した。

 しばらくの間、合宿所の応接室で主務・瀬川雄介と世間話しをした後、立派な室内練習場に案内され、練習を見学する。
「投内の連携なども出来るんで、恵まれてはいるんですけどねぇ。採光性が悪いんで、電気代がバカにならないんですよ」
 と、瀬川。室内練習場の電気代だけで年間200万円近くも掛かってしまうそうだ。

 近隣のロング走(持久走)から選手が次々に室内練習場へ戻って来た。みんな、頭から湯気が立っていることから、外気温が低いのがよく分かる。
 全体練習はこれで終わりらしく、自主練習が始まった。
 大収穫であったのは、今シーズン立命館大のエース格と評されている松村豊司投手の投球練習を間近(ブルペンの真横)で観れたこと。松村はリーグ戦の実績こそ多少の物足りなさを覚えるが、150?近い速球を投げ込む素材の高さが魅力の本格派右腕。今秋のドラフト候補生としてもリストアップされている。
 まだ捕手を立たせたままであったが、松村はキレイな腕の振りで、体重が乗った球を気分良さそうに投げていた。チームの主軸で、今シーズンから副主将の嶋岡孝太外野手(今シーズンから内野手→外野手の予定)も
「先輩が卒業して、やっと責任感が出て来たんと違いますか。練習量が増えていますよ。松村がエースになってくれんことにはウチもヤバイっすからね」
 と、コメントしてくれた。

 合宿所でお弁当をごちそうになり、ようやくインタビュー開始。まずは前述の嶋岡に話しを聞いてから(嶋岡の話しは明日の日記で)、今春、立命館大に入学する金刃憲人(市立尼崎高)投手が応接室にやって来た。

 金刃は兵庫県尼崎市の園田出身。また、左腕で、140?を超えるストレート、キレ味鋭いスライダーを武器に奪三振の山を築くので“江夏2世”と、騒がれている逸材。上背は180?に届かないが、隆々と、発達したふくらはぎから下半身の強さを伺い知ることが出来た。

 金刃は甲子園に出場していない。昨夏の夏の兵庫県地方予選も、準決勝(対 神戸国際付属)で涙を飲む。しかも、9回表まで6−1でリードしていながらも、最終回にまさかの6失点。金刃の高校野球生活は悪夢のような幕切れであった。
「ホンマに自分のせいで、チームメートの高校野球を終わらせてしまいましたからね。1ヶ月以上は立ち直れなかったですよ」
 このように金刃は当時を振り返りながらも
「だから、甲子園に出た選手は羨ましいんですけれども、絶対に負けたくない。負ける訳に行かないんです」
 と、語気を強めた。

 現在、昨春のセンバツ大会で最速の144?をマークした多田文彦(津田学園高、金刃と同じく、今春に立命館大入学予定)が金刃のキャッチボール・パートナーである。
「多田はええ奴やし、仲も良いですねぇ。でも、エースの座は譲れない。必ず自分がエースになります」
 また、そのセンバツ大会の優勝投手・大谷智久(報徳学園高→早稲田大)とも親交が深く、
「そっちはどないや?練習がキツくて、バテバテやわ。せやけど、頑張ろうなぁ。負けへんからんな」
 と、携帯電話で連絡も取り合っているようだ。
 
 大学野球生活は4年間。この限られた時間の中で、金刃は甲子園組にリベンジを果たす。そして、プロ入りも視界に入れて、猛練習に取り組む。誰に聞いても
「金刃はホンマに練習熱心。うわついたところがなくて、マジメを絵に描いたような男ですよ」
 という応えが返って来る。
 さらに、立命館大の投手事情は苦しいのが現状。今春から、金刃の力投を観ることが出来るかも知れない―。

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