実は同じ旨の内容を漫画アクション(双葉社)の連載にも書いた。まぁ、あくまでも同じ旨。自身の中で補足する意味合いも併せて、改めて日記に書かせて貰うことにする。

 ヘッドスライディングにどのようなイメージを持っているだろうか?
 《気持ちの表れた、気迫に溢れた必死なプレー…》
 簡単ではあるけれども、恐らく、そのような感じではないか。

 高校野球の試合では、必要以上にヘッドスライディングのシーンに出くわす。僕のスコアシートには、高校野球限定で赤字の“HS”(ヘッドスライディングの略)が付く。その数の多いこと、多いこと。高校野球=ヘッドスライディングという映像を思い浮かべる人間も多いはずだ。
 だが、ここでヘッドスライディングをはじめ、スライディングの本来の意味を確認したい。
 スライディングはスピードを殺さずに相手野手のブロックをかいくぐる。また、オーバーランを防ぐ目的もある。だから、野球選手としては必ず身に付けなければならないテクニックなのである。

 上記を踏まえながらも、よく見受けられる一塁キャンバスへのヘッドスライディング。これはあまり効果がない。実際に駆け抜けた方が速い。そのように実証されている次第だ。そして、何よりも大切なテクニックであるのだけれども、危険と背中合わせのプレーであることも充分に認識していなければならない。
「なんでわざわざ頭から滑んねん?ケガしに行っているようなもんやで。危ない、危ない」
 “世界の盗塁王”こと野球評論家の福本豊もよく言っているくらいだ。

 プロ野球の選手でもヘッドスライディングを多用する選手がいる。98〜00年のセ・リーグ盗塁王に輝いた石井琢朗内野手(ベイスターズ)などがそうだ。ただ、石井が
「足から滑ろうとすると歩幅を合わせてしまう。そうなると、スピードが落ちてしまうんです。だからヘッドスライディングなんですよ」
 と、語っていたのをどこかで聞いたことがある。そして、石井のヘッドスライディングは胸で滑る、理想形だ。相当、練習を積んでいるのに違いない。

 先日、大学野球の試合でもヘッドスライディングを目撃した。
 1点を争う試合の中盤、ある大学の主力選手(以下Aとする)が四球で出塁後に盗塁を試みた。Aは二塁キャンパス一直線に頭から飛び込んだ。ヘッドスライディングと言うよりは、プロレス技のフライング・トペ(分かり難い表現で申し訳ない)のような捨て身のような形。僕はネット裏で思わず
「危ないっ!」
 と、叫び、目を覆ってしまった。
 Aは二塁にベースカバーに入った遊撃手と交錯。塁審の判定はアウトのコール。で、Aはうずくまったまま動かない。
「肩でもやった(脱臼)かな」
 僕は推測。つい数日前にはMLBのスーパースターであるデレク・ジーター(ヤンキース)が負傷した映像を思い出す。しばらく、試合は中断して、Aは負傷退場となった。

 僕の推測以上にAの負傷はひどかった。野球部のマネージャーに聞いた話しであるが、Aは顔面を骨折。鼻骨や頬骨などがグチャグチャになってしまったらしい。おかげで顔面はしおれた風船のようになってしまい、歯も大半が抜け落ちたようだ…。
 Aは現代医療の形成術を受けたが、これから長い入院生活を余儀なくされる。当分、栄養の補給も点滴と流動食だ。今春のリーグ戦でのプレーが絶望であることは言うまでもなく、秋のシーズンも微妙だろう。また、今後、恐怖感もあるはず。A自身にとっては懸命なプレーであったのだろうが、あまりにもその代償は大きい。

「ヘッドスライディングはしない方が良い」
 そこまでは言わない。ただ、必死さをアピールするだけの闇雲なヘッドスライディングは無謀以外の他にない。選手はその事実を肝に命じるべきだ。状況にそぐわない無意味なヘッドスライディングは見たくない。


 よくよく考えてみれば、僕自身、あまりスライディングの練習に時間を割いたという記憶がない。恥ずかしながら、スタンドアップ式のスライディングもフックスライディングも左足を曲げた形でしか出来なかった(現在でも出来ない)。ヘッドスライディングも投手の牽制で帰塁する時くらいしか、試みたことがない…それはそれで大問題(苦笑)。だけど、1度だけ、豪快で粋なヘッドスライディングを決めたことがある。
 漫画家の水島新司率いる、草野球チーム・BOTTSでプレーしていた頃。アーティスト大会という漫画家や出版社で結成されたトーナメント大会があった。これが1日に5、6試合するから心身共にメチャクチャ疲れるのだ。
 BOTTSは順当に決勝戦まで勝ち上がったのだが、試合途中で大雨に襲われる。残念ながら、優勝預かりで試合は中止。なんか中途半端な気持ちなうえに、BOTTSメンバーは疲労でナチュラルハイ!?僕は周囲のコールに乗せられて、グチャグチャのダイヤモンドでパフォーマンスをするハメに。誰かの打撃フォームを真似して、コミカルにベースランニング。最後の締めは勿論、本塁ベース上で“お約束”のヘッドスライディング。我ながら、キレイな形で滑れたと思うし、周囲は多いに盛り上がった。でも、グショグショ、ドロドロのユニフォームを持って帰るのは大変やったな…(^^ゞ

 そうそう、BOTTSの話しで思い出したっ!
 以前、僕はグランドスラム=満塁弾を放ったことがない。そのように書いたけれども、BOTTS時代に打っています。神宮外苑でライトオーバー(なぜか右打ちが巧くなった。しかも飛距離が出る。大学時代にこの打撃が出来ていれば…)のランニング満塁本塁打。神宮外苑はフェンスがないから、どんなに快心の一打を放っても、走らなければならない。これがホンマに辛い、辛い(大汗)。他の時に、レフトオーバーで三塁打止まりになったこともある程。
「あんなスゴイ当たりを目の当たりにしたのは久し振り。だけど、あの当たりでホームに返って来れなかったヤツを見たのは初めてだ」
 水島先生が嘆いたこともあったなぁ(笑)。
 ちなみに僕が満塁本塁打を打った試合、逆転負けを喫する。ヒーローになり損ねた…(悲)。

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