“エースの仮面”
2005年4月25日 この3日間、関西六大学リーグの“産龍戦”(西京極球場)を観戦した。
関六屈指の好カード。さらに今年は平野寿佳投手(京都産業大)、柳瀬明宏投手(龍谷大)、井村裕之(龍谷大)とレベルの高い投手が揃っているので、
「いやぁ、平野と柳瀬の投げ合いを観に来ちゃいましたよ」
という遠方からやって来たファンもスタンドにチラホラ。土曜、日曜は多くのOBたちも後輩たちの優勝争いの行方を左右する戦いを応援していた。
3試合の概要はHP『こちアマ』http://www.kochiama.com/の《観戦リポート掲示板》などを御参照して戴くとして、日記では平野という投手の魅力を伝えられればと思う。
**************
1戦目は平野にとってはまさに“悪夢”であった。
打線から3点の援護を貰い、8回まで散発5安打を浴びながらも要所を締める流石の投球内容。あと3つのアウトを取れば、リーグ戦通算25勝目の白星を掴めるはずであった。だが、9回裏の先頭打者・菊池高志内野手(龍谷大)に二塁手の右を抜かれる中前安を打たれてから何かが崩れ始めた。今春からレギュラーを獲得した和田隆司捕手の経験の少なさや一呼吸を入れることが出来る内野手がいないということもあったのだろうが、俗に言う一本調子で龍谷大打線に捕まった。犠打を1つ挟んでの6連打で3点のアドバンテージを引っ繰り返されるサヨナラ負け。東向勇樹捕手(龍谷大)の右中間に飛んだ打球を右翼手・政田義範外野手(京都産業大)がスライディングキャッチを試み、グラブに当てながらも落球したのを確認しながら(記録は右前安)、平野はしばらく打球が飛んだ方向を見つめながら呆然と立ち尽くすしかなかった。昨秋の明治神宮大会関西地区代表決定戦(×立命館大)で9回二死から後界昭一内野手(立命館大)に同点からサヨナラ本塁打を食らった時よりも明らかにその時間は長かった―。
試合後、平野は勝ち慣れた時に受けるインタビューではなく、まさかの敗戦を振り返ることに。ただ、予想通りと言うか、平野は非常にサバサバした態度。
《甘さが出たんやと思います》、《野球の恐さ、最後のアウトを取るまで何があるか分からない》、《チームには申し訳ないんですけど、これを絶対に次に活かしたい》
と毅然とした口調で報道陣の質問に応える。でも、一瞬だけ平野の本音と言うか、その時の率直な感情が出た。
「ホンマに何が起こったのか分からないです」
と泣きそうな顔で小首をかしげて肩を落としたのだ。それは試合直後、応援団の校歌を聴いている時にも見せていた表情と同じで、僕は初めて平野のそんな表情を目の当たりにしてビックリしていた。巧く表現出来ないけれども、負けた時でも常に堂々としていた“エースの仮面”がほころびかけてしまったとでも言えば良いのだろうか…。
***************
2戦目は初先発で初完封(被安打1本)の大音周平投手(京都産業大)の好投や打線も切れ目なく繋がり、京都産業大は8−0の快勝。そして、対戦成績を1勝1敗のタイとして迎えた3戦目、平野は中1日で先発のマウンドへ上がった。
勝村法彦監督(京都産業大)が
「ブルペンではあまり良くなかったようだった」
とのことであったが、平野は実に丁寧なマウンドさばき。184?・78?の細身の体躯が二回りは大きく見える程、いつもの姿であった。
平野は8回まで与四球2、与死球1、味方の失策1だけの無安打無得点。1戦目と同様、3点のアドバンテージで迎えた最終回に初安打も許し、1点を失いこそしたが、それは平野の甘さではなく、龍谷大の意地・粘りである。平野はエースとして立派に役割を果たしたのだ。
「ノーヒットノーランは意識しました。まぁ、勿体ないですけど、勝ちは勝ちです。優勝の為に戦っている訳ですし、僕だけの力で取った勝点ではない。だから、素直に嬉しいです。絶対に取り返してやろうとも思っていましたし。1戦目を教訓として結果を出せたのも大きいです」
僅か1日の猶予で“エースの仮面”をシッカリと繕い直した平野。いや、それはまるで素顔であるかのように映った。
こんな素晴らしい投手を一人でも多くの野球ファンに生で観て貰いたい。155?出したとか、15個の三振を奪ったとかのモノサシでは計り知れない凄味があるから。
関六屈指の好カード。さらに今年は平野寿佳投手(京都産業大)、柳瀬明宏投手(龍谷大)、井村裕之(龍谷大)とレベルの高い投手が揃っているので、
「いやぁ、平野と柳瀬の投げ合いを観に来ちゃいましたよ」
という遠方からやって来たファンもスタンドにチラホラ。土曜、日曜は多くのOBたちも後輩たちの優勝争いの行方を左右する戦いを応援していた。
3試合の概要はHP『こちアマ』http://www.kochiama.com/の《観戦リポート掲示板》などを御参照して戴くとして、日記では平野という投手の魅力を伝えられればと思う。
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1戦目は平野にとってはまさに“悪夢”であった。
打線から3点の援護を貰い、8回まで散発5安打を浴びながらも要所を締める流石の投球内容。あと3つのアウトを取れば、リーグ戦通算25勝目の白星を掴めるはずであった。だが、9回裏の先頭打者・菊池高志内野手(龍谷大)に二塁手の右を抜かれる中前安を打たれてから何かが崩れ始めた。今春からレギュラーを獲得した和田隆司捕手の経験の少なさや一呼吸を入れることが出来る内野手がいないということもあったのだろうが、俗に言う一本調子で龍谷大打線に捕まった。犠打を1つ挟んでの6連打で3点のアドバンテージを引っ繰り返されるサヨナラ負け。東向勇樹捕手(龍谷大)の右中間に飛んだ打球を右翼手・政田義範外野手(京都産業大)がスライディングキャッチを試み、グラブに当てながらも落球したのを確認しながら(記録は右前安)、平野はしばらく打球が飛んだ方向を見つめながら呆然と立ち尽くすしかなかった。昨秋の明治神宮大会関西地区代表決定戦(×立命館大)で9回二死から後界昭一内野手(立命館大)に同点からサヨナラ本塁打を食らった時よりも明らかにその時間は長かった―。
試合後、平野は勝ち慣れた時に受けるインタビューではなく、まさかの敗戦を振り返ることに。ただ、予想通りと言うか、平野は非常にサバサバした態度。
《甘さが出たんやと思います》、《野球の恐さ、最後のアウトを取るまで何があるか分からない》、《チームには申し訳ないんですけど、これを絶対に次に活かしたい》
と毅然とした口調で報道陣の質問に応える。でも、一瞬だけ平野の本音と言うか、その時の率直な感情が出た。
「ホンマに何が起こったのか分からないです」
と泣きそうな顔で小首をかしげて肩を落としたのだ。それは試合直後、応援団の校歌を聴いている時にも見せていた表情と同じで、僕は初めて平野のそんな表情を目の当たりにしてビックリしていた。巧く表現出来ないけれども、負けた時でも常に堂々としていた“エースの仮面”がほころびかけてしまったとでも言えば良いのだろうか…。
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2戦目は初先発で初完封(被安打1本)の大音周平投手(京都産業大)の好投や打線も切れ目なく繋がり、京都産業大は8−0の快勝。そして、対戦成績を1勝1敗のタイとして迎えた3戦目、平野は中1日で先発のマウンドへ上がった。
勝村法彦監督(京都産業大)が
「ブルペンではあまり良くなかったようだった」
とのことであったが、平野は実に丁寧なマウンドさばき。184?・78?の細身の体躯が二回りは大きく見える程、いつもの姿であった。
平野は8回まで与四球2、与死球1、味方の失策1だけの無安打無得点。1戦目と同様、3点のアドバンテージで迎えた最終回に初安打も許し、1点を失いこそしたが、それは平野の甘さではなく、龍谷大の意地・粘りである。平野はエースとして立派に役割を果たしたのだ。
「ノーヒットノーランは意識しました。まぁ、勿体ないですけど、勝ちは勝ちです。優勝の為に戦っている訳ですし、僕だけの力で取った勝点ではない。だから、素直に嬉しいです。絶対に取り返してやろうとも思っていましたし。1戦目を教訓として結果を出せたのも大きいです」
僅か1日の猶予で“エースの仮面”をシッカリと繕い直した平野。いや、それはまるで素顔であるかのように映った。
こんな素晴らしい投手を一人でも多くの野球ファンに生で観て貰いたい。155?出したとか、15個の三振を奪ったとかのモノサシでは計り知れない凄味があるから。
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