女子野球雑感

2004年7月25日
 えーっ、日記を読んでくれている方は御存知だと思いますが。
 7月18日〜21日に開催されていた第4回女子野球世界大会(富山県魚津市/桃山球場)の取材へ出掛けていた。

 6月の合宿を観た時も思ったことだが、女子野球<男子野球ではない。(レベルの高い選手が集まっているというのもあるが)
 確かに男子と女子の体力差はある。殊に下半身の粘り強さという点では男子に分がある。よってベースランニングの伸びや投手の体重の乗り方などは女子の方が劣るという点は認めざるを得ない。しかし、一般的に身体の柔軟性は女子の方が優っている。投球フォーム、打撃フォーム、打球への入り方などは女性の方がしなやかだ。非常に美しい。

 そして、もっと美しいのが野球に対する姿勢である。
 全日本(チーム・アミノバリュー)の代表選手はセレクションによって全国各地から集まっている。数少ない硬式女子野球部に属している者、男子の中に入って硬式野球をプレーしている者もいる。その他にも女子の軟式野球チーム、男子の軟式野球チーム、ソフトボールなどなど。
 但し、ここで言えるのは。彼女たちは野球を続けて行くうえで男子よりも熱意を見せなければならない。正直なところで
「女子が野球なんて」
「男子には敵わないんやから」
 というような風潮があることは否めない。当然、彼女たちがプレーをするハードは…男子と比べた際、明らかに劣悪と言えるだろう。
 それでも、野球をやりたい。白球に対する想いが強くなるのは必然なのかも知れない。

 だが、日本はまだ恵まれているというのも現実だ。理解のある企業がスポンサーとなってくれている。頭の先から爪の先まで用具、道具が揃っているのも日本だけであった。
 スパイク、ヘルメットはバラバラで当たり前。(色も違う)キャッチャー道具などは明らかに日本の“お下がり”といった国もあった。

 今回、世界大会に参加した国は日本、アメリカ、オーストラリア、カナダ、香港、チャイニーズ・タイペイ、韓国、インドの計8カ国。適切な分類の仕方であるかどうかは分からないが、日本、アメリカ、オーストラリア、カナダが女子野球先進国。香港、チャイニーズ・タイペイ、韓国、インドが後進国となるのでは。現時点では力量、技量の差に開きがあったのは一目瞭然であった。戦術も然りである。
 でも、後進国も侮れない。日本が予選で対戦して、結果的には大勝した韓国、香港も近い将来、力を付けて来るに違いない。(シッカリした指導者が必要という条件はあるが)それは野球をプレーするうえで一番、大事なものは既に持っているから。
 一球、一つのプレーにチーム全員が声を出す。一つのアウトを取る度にチーム全員で歓喜の声を挙げる。これは一球、一つのプレーの重さ、一つのアウトを取る難しさを知っているから。点差がどんなに開こうともそれは変わらない。

「正直、今はレベルは違うけど、我々が見習うべきこともたくさんある。アウトになると分かっていても全力疾走を怠らない。野球の原点ですよ」
 全日本代表を率いる広瀬哲朗監督も素直に後進国の良さを認めていた。

 高校野球が“一所懸命”の代名詞のように言われているが。僕に言わせれば、女子野球と比べれば甘い。

 百聞は一見に…である。機会があれば、彼女たちのプレーを生で観て欲しい。先入観や固定概念は吹き飛ばされるに違いない。
 尚、優劣ではなく、女子ソフトボールとは全く異質なものであることを付け加えておきたい。

 とにかく僕にとっては有意義な取材であった。

“つる”の涙

2004年7月25日
 片岡安祐美内野手は日本代表のチームメートから“つる”と呼ばれている。
 3年前。当時、最年少で代表入りした際に
「片岡だったら鶴太郎でしょ。はい、“つる”で決まり」
 と先輩らの権限でニックネームが決まった。

“つる”は現在、熊本商高の3年生。高校野球連盟の規定で公式戦に出られないのを承知で硬式野球部に所属している高校球児である。
「もしかしたら規定が変わるかも知れない」
「私がプレーすることで契機になれば」
「女子でも男子に負けないプレーが出来る」
 小学、中学時代も男子の中に入って、レギュラーを張った力量と強い意思。また、両親や指導者の理解、周囲のサポートなどがあったことも忘れてはいけない。ただ、やはりそれは“つる”自身が野球を続けて来たことで培って来た“人間力”がそうさせた。“つる”のプレーを1度でも観れば、それがヒシヒシと伝わって来る。

 小柄(153?)ではあるが声は大きく、よく通る。ウォーミングアップの時は景気付けの声が出て、シートノックや試合になれば的確な指示を出す。ベンチにいても同様。打席を控えてのウェーティング・サークルではビュンビュンと素振りを繰り返し、打席に入れば
「さぁ、来いっ!」
 相手投手にバットの先端を向け、気合の雄叫びを上げる。
「私の取り柄は“元気”だけですから(笑)」
 と本人は語るが、集中力があり、野球をよく知っているから。そして、何よりも野球が大好きだから、そういうプレースタイルになる。
 余談ながら愛くるしい笑顔を絶やさないのも魅力。“動”と“明”が似合う選手だ。

 その“つる”がいつになく神妙な面持ち。間違いなく“静”と“暗”の表情を見せた。

 7月20日の日本×香港(予選3試合目)。
“つる”はこの試合、9番・二塁手でスターティング・メンバーに名を連ねていた。試合前セレモニーのスタメン発表で
「9番、セカンド、片岡安祐美。セカンドベースマン、アユミ・カタオカ」
 というアナウンスの声に一塁側ダグアウトから弾けんばかりの勢いでグラウンドへ飛び出した“つる”。メンバーと笑顔でハイタッチを交わしていた。
 しかし、国歌斉唱の時である。
 帽子をベルトの高さに両手で大事そうに抱え、やや俯き加減で目を閉じながら“君が代”を聴いていたのだ。前日の国歌斉唱時はメジャーリーガー風に帽子を胸の前に掲げ、いつもの笑顔を見せてポーズを取っていただけに、ギャップを感じざるを得なかった。ただ、それは“つる”の偽らざる心境を表していたのだ―。

 前述したように“つる”は全日本のメンバーである前に熊本商高の硬式野球部員であるのだが、この世界大会に参加するにあたって、甲子園大会を目指すチームから離れなければならなかった。だから、熊本で県予選を戦うチームメートと誓い合った。
「絶対、世界大会で金メダルを獲って来いよ。俺たちも負けないで頑張っているから」
「分かった。必ず金メダルを獲って帰って来る。そして、一緒に甲子園へ行こう」

 しかし、その誓いは果たされなかった。熊本商高の硬式野球部は“つる”が金メダルを獲って帰る前に敗れてしまう。この日の朝一番の試合で文徳高にサヨナラ負け(2×3)を喫したのである。
“つる”の父親・片岡安徳から聞いた話しではあるが、宿舎でその報を受けた“つる”は部屋の中で一人、涙を流し続けたそうである。

 約2年半。苦楽を共にした仲間との高校野球生活。甲子園への夢が断たれたのは勿論、最後の場に居合わすことが出来なかった。そして、チームでは“女子だから”という特別扱いこそ受けていなかったものの。やはり、“つる”は女子なのである。第三者には到底、推し量ることが出来ない想いで高校野球生活を送って来た。その胸中はいかに?

 いざ試合が始まると。“つる”はそのような現実を感じさせない程の活躍を見せた。そして、いつにも増して、大きな声を張り上げる。試合にも大勝。“つる”は本当に強かった。

 試合が終わり、当然のように報道陣にも囲まれる。報道陣に悪気はないが、厳しい質問も飛ぶ。それでも、“つる”は気丈に振舞う。気の利いた報道陣が取材の最後に
「ゴメンね。こんな時にキツイことも聞いちゃって」
 と一言入れるが
「全然、大丈夫ですよ」
 白い歯を見せて応えていた。

 その後、日本代表の円陣(試合後のミーティング)が解け、各選手は応援に駆け付けていた家族や友人などと束の間の安息時間を過越している。試合に勝利したこともあり、あちこちに喜びの輪が出来ていた。しかし、その片隅で…帽子で顔を覆い、号泣している選手がいた。“つる”である。ミーティングも終わり、一区切り付いたことで堪えていたものが一気に溢れて来たに違いない。その姿に気付いた報道陣は一斉にカメラを向ける。

 正直、僕も迷った。手にしていたビデオカメラを回すべきかどうか。でも、結果的にビデオカメラの電源を入れることは出来なかった。僕自身を正当化する訳ではないが、この“つる”の姿だけは撮ってはイケナイ。スポーツライター(端くれではあるが)として、これは映像で記録しておくのではなく、活字で表現するべきだと判断したからだ。

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 翌7月21日。
 日本代表チームは準決勝(×オーストラリア)、決勝(×アメリカ)を制して、世界大会2連覇を成し遂げた。
“つる”は
「必ず金メダルを獲って帰る」
 という熊本商高チームメートとの約束を守った。そして、前日とは違う涙が“つる”の頬を伝う。
「まだ消化出来ない部分はありますけど、何かホッとしています」
 言葉では言い表せないくらいキレイな涙であった。
「これは撮ってもええやろう」
 僕はそう心の中で呟いて、ビデオカメラの電源を入れた。

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 閉会式も終わり、金メダルを首からぶら下げた“つる”にようやく私的な立場で祝福の声を掛けることが出来た。
「色々あったけど、良かったなぁ」
 僕は自然に右手を差し出していた。大会期間中、大声を出し続けたせいだろう。
「ありがとうございます」
 と言う“つる”の声もさすがにしゃがれている。
 その“つる”と握手を交わして感じたことは。
 これまでにも人知れず、たくさんの涙を流して来たことだろう。でも、それ以上の努力を積み重ねて来た。高校生の女の子とは思えない“つる”のマメだらけでゴツゴツした感触が物語っていた。そして、それはこれまでに経験したことのない、とても心地が良い感触でもあった。

 これからも片岡の動向に注目したい。

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 実は…“つる”には決勝の試合中にもハッとさせられている。
 この試合、“つる”はベンチスタートでスコアを付けていた。でも、当たり前というか、大声を出し続けている。

 アメリカの攻撃時。走者が一塁にいて、打者が二ゴロを放った。誰もがダブルプレーと思ったが…打球が少しイレギュラーしたこともあり、二塁を守っていた和田有加内野手が後逸。日本代表のベンチも思わずシーンとしてしまう。
 その瞬間、1万人以上の観客が詰め掛けた桃山球場に“つる”の声だけが響き渡った。
「セカンドベース空けちゃダメーッ!ベース空けちゃダメーっ!和田さん、エラーした後ぉーっ!」

 この子はホンマに凄いと思った。生まれて初めて、ベンチの声を聴いて背筋がゾクゾクしたもんなぁ。

 今後、大学に進学しても野球を続けたいと語る“つる”。
 男子の中に入っても、充分に通用するモノ(力量、技量、心)を持っていると僕は信じている。
 あとは“受皿”だけだ。

20万HIT御礼

2004年7月25日
『写真館』http://www.alfoo.org/diary/shimajoe/が好評のようだ。
 やっぱり、いつもより“色気”があるからなんかな!???

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 2002年11月11日から日記を書き始めて。先日、おかげさまで20万HITを超えました。心より感謝と御礼を申し上げます。

 一応、本職のライターである。(まぁ、これは本人が言い張れば良いだけの問題)
 仕事上では当然、制約(出版社、編集者の意図や紙数など)は生じて来る。文句はないが、それなりにストレスは溜まる。
 で、書きたいことを何の制約もないところで好き放題に書きたい。そう思い、この日記を書き始めたのであるが…まぁ、実際は色々としがらみがありますわな。なんせ匿名性がないもんで(苦笑)。ぶっちゃけ話しで
「日記、書くのやめ〜っ!」
 と思ったことも多い。
 それでも、仕事以外で他人の目に触れるところで文章を書くことは正解だった。間違いなく、そう断言出来る。
 それなりにテクニックも身に付くし、日記を書くという習慣は不規則になりがちな生活のアクセントにもなる。
 そして、公私を問わずにコミュニケーションの一つにもなっているのは有難い限り。
「日記、読んでいるよ」
「楽しみにしています」
 社交辞令もあるだろうが、そう言われて悪い気はしない。
 カウンターだけを気にしている訳ではないが、HIT数が伸びれば、それも悪い気はしない。規模の大きい小さいは抜きにして、これだけの人(のべ人数ではあるが)が駄文であるにも関わらず、読んでくれているというのは何よりの励みになる。

 今後、誠に自分勝手ではあるが、日記を読んでくれている人が何を望んでいるかということはあまり考えない。背伸びすることなく、自分の活動、生活の範疇で少しでも長く日記を書き続けることが出来れば幸い。
 そして、この日記を読んでくれている人に感謝することを忘れずに。

 どうか今後も宜しくお願い申し上げます。

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 相変わらず。こんなペイペイ・ライターの元にもしばしば
「ライターになりたいんですけど」
 と言って来る者が多い。そして、一方的に夢を語って来る。正直に言うが、あんまり聴いていないっす。夢に向かって、何かしらのアクションを起こしている人間は別やけれどもね。(僕ごときに夢を語るのはアクションでも何でもありまへん)大体が
「なりたい、なりたい」
 と言うてるだけで何もしていないんやもん。

 ネット上で日記を書けとは強制はしない。それが近道だとも思わんし。でも、一番、簡単で効率の良いキッカケにはなるはずなんちゃうかなぁ。
 ライターで食って行けるかどうかは問題でなく、仮にどんなに時間を要したとしても20万HITでも超えれば、それは大きな自信になるとは思いますぅ。
 どないでっしゃろう?
 えーっ、女子野球ばかり観ていた訳ですが、ちゃんと大学野球の取材にも行っております。(高校野球の地区予選、全く観に行かれへん…)

 近畿大は大隣憲司投手。
 龍谷大は柳瀬明宏投手にインタビュー。

 尚、龍谷大は金沢星稜大学とOP戦をしていた。

 その際の画像(10枚)を『写真館』http://www.alfoo.org/diary/shimajoe/にて更新。

※サムネイルをクリックすると写真は拡大されます。

 
 この日記でも取り上げた、女子野球の片岡安祐美内野手。
(8月上旬に立ち上げ予定のHPでも取り上げますが)

 今夜23:24〜の『スポーツ魂』(テレビ東京系列)でも特集がOAされるようだ。
(ネタが被ったとは言わんといて。まぁ、それだけの力を持った選手やから)

『野球狂のネタ5』(関西テレビ)でお世話になった伊集院光が来ていたんはそういう訳やったんやね。

 どのような目線でOAするのか、非常に興味深い。

 皆様も時間が許しましたら、是非!

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 女子野球の代表選手。片岡以外にも魅力に溢れた選手はたくさんいる。いや、代表選手だけでなく、セレクションで漏れた選手やチームを支える裏方などもそうである。

 ホンマ、みんなを取材したいっすよ。

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